24 hours endurance race 2

2012年06月22日 08:00

恐らくレースはあと4時間くらいの所だったでしょうか。ここで大きなトラブルが発生しました。エンジンブローです。想定している中で最悪のトラブルです。

'想定している中で'と書いたように、いくつかのトラブルを予想して準備をしています。それまでのシリーズ戦でも同じクルマを使っている他のチームではハブのトラブルが多かったんですよ。市販車改造クラスのアキレス腱なんだと思いますが、スリックタイヤで長い時間レーシングスピードで走るとハブが堪えきれなくて破損してしまうんですよね。

wheeluubbearing.jpg

あまりにも破損が多かったのでメーカーも対策品を用意してくれていましたが、長丁場だとそれも堪えられるか分らないって事でハブ交換の練習はかなりしました。しかし、元々、私達のチームはこのトラブルが少なく、それはアライメントに違いがあるからじゃないか?なんて言われてましたけどよくはわかりません。他のチームは数回交換をしていましたが、結局私達のチームはそのまま走りきっちゃいました。

Lancer Evolution Engine
Photo by Hurock24

エンジンブローした時にリタイアか?それとも交換してレースに復帰するかの判断が監督に委ねられます。残り時間とトップチームの予想周回数を計算して、復帰すれば完走ができると判断してエンジン交換に踏み切ります。

Luc Alphand Aventures - Corvette C6R
Photo by Dave Hamster

通常のレースではピットにクルマを押し込んで交換作業を行うのですが、このレースでは特別レギュレーションがあって、メインスタンドから見える特別ステージで公開作業を行うんです。特別ステージってただのアスファルトの上ですけどね。メインスタンドから見えるようにテントなんかもありません。ピットから数十メートル離れたその場所に交換エンジンはもちろん、エンジンハンガーやジャッキ、リジットラック、工具、油脂類から何まで全部人海戦術で運んでいきます。まぁ、ラリーの現場を想像してもらえばいいのかな。

Untitled
Photo by Ford in Europe

そこで、観衆が見守る中エンジン交換スタートです。もうレースも20時間も経過して太陽も燦々と降り注ぐ中、体力も限界に来ていましたが、やっぱりアドレナリンって出るんですね。もう一心不乱に作業しましたよ。レースカーだからエアコンやカバー類など余計な部品は付いていませんが、基本的には市販車と同じ構成なのでGTカーなどと比べたらそれは大変です。特に4輪駆動車だったので工数も増えますからね。ドライブシャフト、プロペラシャフト、トランスファーを外してエンジンとミッションはくっついたまま取り出します。
観客の方々には最高のアトラクションだったと思いますよ。マグロの解体ショーみたいなもんですからね。こんなサービスがレースには足りないんだろうなぁー。

Dynojet Racing BTCC Toyota Avensis
Photo by Toyota UK

なんとか2時間弱くらいだったかな?エンジン交換を終わらせてレースに復帰。無事に走りきってクラス3位で終えました。感慨に耽る暇もなく慌ただしく撤収をして・・・気絶するように眠りたい所でしたが、若手社員の研修を兼ねて社長が観戦に来ていたので慰労会みたいなものを設けて下さいまして・・・まぁ、座りながら寝てましたけどね(苦笑)

In the pits with the team
Photo by CHEVROLET EUROPE

そんな思い出があるので、どうしてもドライバーよりもメカニックの目線でレースを見てしまう自分がいます。たった1年のレースメカニック体験でしたが、なかなか面白い事をさせてもらったなと感謝しています。

ドライバーが「メカニックに感謝しています。」なんて言うのも、決してリップサービスではなくそう思っているんだと思いますよ。レース関係者の皆様、お疲れさまでした。

Jr

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