対立を煽っても何も解決しませんよ

2022年06月23日 12:05

自動車専門誌ベストカーWebの記事。誤った情報で自転車と自動車の対立を煽るのは見過ごせません。それもあからさまに「ページビューだけ稼げればいいのだ!」と言わんばかりの悪意に満ちた見出し。

無法者の自転車乗りが急増中!! ドライバーが身を守るために知っておくべき最低限の知識とは?ベストカーWeb)

自動車も自転車も大好きな私がまず前提として言っておきたいのは、自動車が効率よく走れるように設計された現在の道路事情では自転車が法律通りに走る事が非常に難しくあらゆる矛盾に直面します。その都度、各々が考えて対処するしかありません。ルールを守ろうとすれば危険が伴うこともあります。そのような歪みを皆が理解して道路をシェアするしかありません。憎み合うのはドライバーとサイクリストではなく、ルールと道路事情のアンバランスです。

下品な見出しの記事から以下を引用します。

「ただし、こうしたケースのポイントは、路側帯(自転車専用レーン)があるか否かだ。片側1車線以上の道路に「路側帯(白い実線が1本)」がある場合、自転車が通行できるのは路側帯に限定されている。」
ベストカーWebより)


サイクリスト有志によって間違いが指摘され一部訂正されたようです。

 こうしたケースの場合、路側帯(自転車専用レーン)があるか否かもポイントになる。片側1車線以上の道路に「路側帯(白い実線が1本)」がある場合、自転車は車道とともに路側帯も通行できる。
ベストカーWebより)


訂正された結果、前後の文脈からするとあまり意味のない文章となりました。やはり邪魔だから路側帯を走れ!と言いたいのか?自動車の利便性を求め、路側帯にいる歩行者のことはどうでもいい!?もうこの記事自体を削除するべきだと思うんですけどね。

基本的に自転車は車道を走る
多くの方がご存知だとは思いますが、自転車は車道を走ります。路側帯は車道ではありません。ただし、歩行者の通行を妨げることがなければ路側帯を走ることができます。訂正前の記事で言及しているように路側帯を走れと限定される事はありません。記事を信じて車道を走っている自転車にクラクションを鳴らすと煽り運転の加害者になるのでご注意ください。

■ 自転車の通行に関する法規制
(1)通行する空間
・ 車両は、歩道又は路側帯と車道の区分のある道路においては、車道を通行しなければならない。(法17条1項)
(中略)
・ 軽車両は、前条(17条)第1項の規定にかかわらず、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、路側帯を通行することができる。この場合において、軽車両は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない。(法17条の2)
https://www.mlit.go.jp/.../city_traffic/6/images/sankou1.pdf


車道の左側を走ることになりますが、車道走行レーンを半分にしてその左側なら法律的に問題ありません。自転車も後続車両の通行を妨げたくないのでなるべく左端を走るようにしますが、大型トラックなどによってできた轍など道路状況によってそこをキープするのが難しい場合もあります。もう一度言いますが、左端は車線内の左端で路側帯(路肩)ではありません。

自転車道があればそちらを走らなければならないが・・・
そもそも最初の暴論は路側帯と自転車道を混同したのかもしれません。自転車道があると普通自転車は自転車道を走ならければなりません。この辺が厄介で自転車道(自転車専用道路、狭義の自転車道)と歩道にペイントなどで指定されている自転車走行可標識のあるレーン(広義の自転車道)は別物です。

cycleroad.jpg

例えばこの場合。自転車道と書いてありますが、自転車走行可能な歩道であり、自転車が必ずここを走らなければいけない自転車専用道路ではありません。非常にわかりにくいでしょ?私も確信が持てずに地元の警察署に確認をしました。

また普通自転車とは・・・

法第六十三条の三の内閣府令で定める基準は、次の各号に掲げるとおりとする。
一 車体の大きさは、次に掲げる長さ及び幅を超えないこと。
 イ 長さ 百九十センチメートル
 ロ 幅 六十センチメートル
 二 車体の構造は、次に掲げるものであること。
二   
 イ 四輪以下の自転車であること。
 ロ 側車を付していないこと。
 ハ 一の運転者席以外の乗車装置(幼児用座席を除く。)を備えていないこと。
 ニ 制動装置が走行中容易に操作できる位置にあること。
 ホ 歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと。


自転車を見てこれは普通だ、これは普通じゃないと見分ける自信がありますか?タンデム車なんかは普通自転車ではなさそうとすぐに気がつくと思います。トレーラーを引く自転車もそうでしょう。しかしマウンテンバイクはどうですか?最近のマウンテンバイクはハンドル幅が60cmを超えるのが一般的で普通自転車ではないんですよ。

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自転車道があるんだから車道を走るなよ!と思っても、そこが本当に狭義の自転車専用道なのか?その自転車が普通自転車だと一瞬で見分けるのはなかなか難しいのが現状です。

【自転車の妨害運転】
「クルマやバイクの通行を妨害し、それらに危険を感じさせる恐れのある方法をした者に適用される。その方法とは以下」
D.一時停止中や徐行中のクルマを右側から追い越す

ベストカーweb)


いまだに訂正されていないのがこの部分。自転車も例えばバスやタクシーが左に停車したら右から追い抜きます。自転車が車道を走っていて、前方の車が一時停止したらその車が動き出すまで停車しろって事?何を根拠にこんな記事を書いているのかが全くわかりません。情報ソースがどこかにあるのでしょうか。どう考えてもベストカーwebの記事は、自転車は邪魔なので、歩行者と一緒に歩道に閉じ込めたいといったエゴが見え隠れしています。

bicycleroad.jpg
自転車道を塞ぐように一時停止する自動車。これ右から抜く以外なにかありますか?

最後に
最初にも書きましたが、自動車が効率よく走れるように設計された現在の道路事情では自転車が法律通りに走る事が非常に難しくあらゆる矛盾に直面します。自転車道を走っていたら、その自転車道が急になくなってしまうなんて日常茶飯事。自転車道は進行方向どちらでも走行可能なので、結果的に車道逆走誘導路になっているなんて事も珍しくありません。

もちろんルール無視の危険なサイクリストがいるのも理解しています。でもそれは同時にドライバーも同じですよね。
皆さんの共通認識としてルールと現状がチグハグである現状をわかっていただきたい。自転車は免許が必要のない身近な移動手段でそれがメリットでもありますが、反面ルールの理解度に差があるのがデメリットになっています。まぁ、こんな記事が出るのも自転車サイクリストだけがルールを理解していないのではなく、自動車のドライバーも理解しいていないわけですが。
皆が安全に道路をシェアするためには、サイクリストが自然とルール通りに走った方が快適なシステム(道路)に変えていくしかないと思うんですよ・・・残念ですが今はその真逆です。

この下品な見出しには「無法者の自転車乗りが急増中!! ドライバーが身を守るために知っておくべき最低限の知識とは?」とあります。この"身を守る"は比喩表現ですよね。鉄のボディで守られたドライバーが自転車から、まさしく肉体的な恐怖を感じることはないでしょう。(例外はいろいろ挙げたらキリがないので単純に接触した場合に留めておいてください)もし自動車ドライバーがベストカーwebの情報を鵜呑みにして車道を走っている自転車を教育しようなんて気持ちで幅寄せをしたら、自転車サイクリストは比喩ではなく本当に身の危険を感じます。そのような危険運転を助長するような記事なるって自覚は残念ながらないようです。

海外のトラックドライバー教育では、ドライバーが実際に自転車に跨がり、近くをトラックが通り過ぎた際の風圧を体感させるカリキュラムがあるそうです。サイクリストはあまり状態の良くない車線の左端をキープしながら無理な追い越しに恐怖を感じています。自転車に乗っていなくても狭い道を歩いているときに車が近くをすごいスピードで走り向けたら怖いですよね。

もうひとつ海外の取り組みを紹介します。オランダやベルギーなど自転車の先進国はありますが、英国は自転車フレンドリーな国ではありませんでした。しかし、今では自転車を中心とした都市へシフトしています。そんな英国から飛び出した夢のようなビッグプランが空中自転車レーンです。日本は狭いから無理なんてのは全く的外れです。



東京五輪をキッカケにこのような夢のあるプランがどんどん出てくると期待していましたが、残念ながらそうではありません。ドライバーとサイクリストがいがみ合うのではなく、前進する事を願っています。

Jr

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