2012年06月21日 08:00
ル・マンのドライバーインタビューを何人かテレビで観たのですが、皆さん「チームのメカニックに感謝します」と付け加えていたのが印象的でした。何時間も集中力を切らさずに極限状態で走るドライバーは尊敬に値しますが、メカニックも大変なんです。
メカニックの人大杉!?
ピットを見ていてメカニックが多すぎるんじゃないか?って思う人もいると思うんですよね。でも24時間となると多くのメカニックを必要とします。まずタイヤ交換があるから各タイヤに1人で4人いりますよね。更に給油があるのでクイックチャージャーをガチッと押し込む人と近くで消化器を構えている人の2人が必要です。給油とタイヤ交換で最低6人。

Photo by daigoasx
それと、ピットに入って来たクルマの目印となるように看板を持っている人も思い浮かびますか?フォーミュラーやル・マンカーだとてこの原理でジャッキアップする人ですね。ツーリングカーの場合は車重があるのでそれでは上げられません。その代わりにエアージャッキが仕込まれているのでエアホースを接続してジャッキアップします。ここに2人。(前輪と後輪を同時に交換出来ないので、後に交換する人が兼任してたかな)

Photo by Roman Rusinov
4時間くらいのレースであればこの人数プラスαで対応できるのですが、24時間となると更に増えます。タイヤ交換をした時にタイヤを受け取って新しいタイヤを渡す人や、フロントガラスに付いた虫の死骸を掃除する人やクルマの前に送風機を置いてラジエーターに風を当てる人など・・・もちろん兼任もするのですが、誰がどの仕事をするか?はもちろんルーティンでピットインした場合にどのフォーメンションで動くかなど細かく決めてあります。
私はこのカテゴリーには追加招集されたので最初に挙げたタイヤ交換や給油には関わっていません。やはり何度も行うルーティン作業は慣れているメンバーがいいだろうとの判断でした。じゃぁ、何を担当していたかと言うとタイヤを受け取って渡すのと、ガラス掃除。なんだ楽勝じゃんって私もここまでは思っていたのですが、更にブレーキ交換が命じられました・・・。
どうやれば早く!?
通常の耐久レースではブレーキ交換の必要はないのですが、24時間レースでは最低1度交換する必要がありました。私のいたチームでは一度だけフロントを交換する作戦。なんか助っ人なのにとんでもない仕事を命じられたなーとちょっとブルーになりましたが観光に行く訳じゃないですからね。どうやったら早く交換出来るかガレージで構想を練り、練習をしましたよ。

Photo by Island Capture Photography
パッドを交換するのに一番早いのは、キャリパーにパッドが残ったままアセンブリーで取り外して、すでに新しいパッドがセットされたキャリパーに交換する事としたのです。オイルラインのエア抜きは必要がないようにブレーキホースはクイックコネクター式にしました。(交換するキャリパーは、車両に組み付けてエア抜きが終わった状態で取り外し準備)どうせキャリパーを外すので焼き入れが終わったローターも新品に交換します。
赤く燃える
ブレーキ交換は明け方。夜のホームストレートを駆け抜けるクルマのブレーキは真っ赤になってキレイなんですよ・・・いや、その時はキレイなんて一つも思いませんでしたけど・・・ハードなブレーキングを繰り返しているのでブレーキローターは摩擦熱で真っ赤に燃えてるんですよね・・・(苦笑)

Photo by richardkortland
ついにブレーキ交換のピットイン。フロントタイヤを外してもらい、ポジションにつきます。軍手を重ね耐熱グローブをしていてもしっかりと熱は伝わって来てきますが、それは我慢が出来るレベル。でもね、交換するためにタイヤハウスの中に頭を突っ込みたいのですが、ローターから熱気が上がって来て入れられないんですよ。頭を入れようにも人間の防衛本応なのか、頭がフェンダーに当たってしまう。こんなにタイヤハウスって小さかったっけ?ってね。
今思えばゴーグルをしておけばよかったのでしょうが、始めての経験ではそこまで頭が回りませんでした。なんとかブレーキキャリパーを外して、ローターを外し交換完了。練習のおかげでそれなりの時間で終えましたが、しばらくしたら何カ所か火傷している事に気がつきました。
ピット作業以外
ピットにクルマが入ってない間はヒマのなか?と思われるかもしれませんがそうでもない。まずタイヤの入れ替えが大変でしたね。摩耗したタイヤを台車に乗せてピット裏のタイヤサービスまで持ち込み、新品のタイヤに組み替えてもらってピットに運ぶ。これは何回やったのかな。雨が降りそうなものならレインタイヤも準備するので回数が増えます。

Photo by Audi USA
あとは、サインボードを出してタイム差や周回数をドライバーに知らせたり・・・。
それと、レースのメカニックにはガレージ作業も行っている人と、サーキットだけに来る人がいて、ガレージ作業も担当している私は様々な人にいろいろな事を聞かれる(あの部品はどこだ?)のでそれの対応で忙しかった気がします。
でも、そのレースにだけくるメカニックの人たちは本当にプロのレースメカニックの人達でした。一番驚いたのはレースがスタートして間もなく、私達は興奮してモニター見たりそわそわしているのですが、そんな時にもう仮眠してるんですよ。寝ないと一番大変な時に動けないって事なんですけど驚きましたね。私は素人なので恐らく5分くらいしか寝てないと思います。レースは24時間ですが、スタート当日の朝から準備をしていますし、その前日の予選で何かあった日には睡眠時間はまとまって取れないので寝られる時にすぐに眠れるスキルは必須なんだと思いました。
まぁ、大きな接触事故もなくレースは進行していたのですが・・・
つづく
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コメント
バオヤッキー | URL | mQop/nM.
なるほど、僕は元々「ふたり鷹」っいうバイク漫画でボルドーやルマン、シルバーストーンなどの耐久レースに興味を持ちましたが、メカニックの裏側までは描写されてなかったので今回はチョットJRを尊敬しましたd(^_^o)
アイドラーズの12時間耐久も面白いらしいのですが観客はやる事がなくて、写真を撮ったらサッサと帰ってましたが今年はチョット考えてみようかな(;´Д`A
( 2012年06月21日 09:26 [Edit] )
ブログ管理人「Jr」 | URL | -
バオヤッキーさん
漫画の影響って大きいですよね。スプリントレースは、車検が終わっちゃえば「いってらっしゃ~い」でサインボードもってホームストレースで待つしかできないのですが、耐久は緊張感ありましたね。ドライバーの削った時間をメカのミスでちゃらにしてしまうプレッシャーもありますから。まぁ、私もほんのちょっと体験してきただけなので偉そうな事は全然言えないのですけどね。きっと、チームの不安要素だったでしょう(苦笑)
耐久レースは運営側がもっと工夫しないと観客はそうなっちゃうと思います。誰が一番だかも分らなくなりますからね。ちょっとは見方が変わるかな?バオさんのライブラリーにピットワークの写真が加わるのを期待しています!
( 2012年06月21日 10:15 )
JARA | URL | hemLMyTg
なんと、そんなステキな経験されてたのですねー。
(実際にはステキじゃすまんのでしょうが(^^;;)
その某12耐にド・アマチュアチームで参加したことあるんですが、
そんな素人チームでもしっかりチーム戦だなぁと実感しました。
耐火装備がドライバーが一番しっかりしてるから、給油はドライバーが
持ち回りでやったりして。懐かしい。
チャンスがあればまた参加したいですね。あれは大変だけど嵌る。
モータースポーツヲタ生活のきっかけはル・マンの雑誌記事なんですよ。
956/962絶対王政の頃ですねw
秋のWEC in Japan 行ってみようかなぁ。
( 2012年06月21日 10:28 [Edit] )
ブログ管理人「Jr」 | URL | -
JARAさん
今、思えばステキな経験でしたね。無茶な人事に感謝です(笑)アマチュアレースだったら、本気の運動会みたいで楽しそうですね。そんなのだったら参加してもいいな。
するってーと、ル・マンは原点なんですね。モータースポーツってストーブリーグから背景を知っているとより濃密に楽しむことができますよね。雑誌記事は貴重でした。WEC in Japanいいじゃないですか。そう言えば改修されてからの富士って行った事ないや。
( 2012年06月22日 11:50 )
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