白州次郎とベントレー 4

2012年08月29日 08:00

今日の記事は「元気な企業を創るデザイン」CREWのblogから転載しました。


前回のつづきです。

大切なこととは・・・。
1924 Bentley 3 Litre

涌井さん「英国のベントレードライバーから、『Mr ワクイ、この車こそ君が持つことが最も相応しい』と言われ、今は僕が預かっているのですよ・・・」

僕は、この言葉に秘められた“真理の力強さと美しさ”に感動し鳥肌が立ったことを覚えています。涌井社長の話は続きます。

涌井さん「電力さんとトヨタさんは、白洲次郎が乗っていた価値に目を付け、飾っておくために所有したかったのでしょうね」

勿論、東北電力は初代経営者が英国留学中に愛用していたベントレーを、企業シンボルとして大切に保管したいと願う正当な願望です。トヨタが世界最大級の自動車メーカーの立場から、歴史的資産としてミュージアムに展示し、多くの人たちに見ていただきたいと願う。これも真っ当な使命感です。ベントレーを投資対象にするなどと言う卑しさはないと信じています。

1924 Bentley 3 Litre

所有するのではなく預かっているのです
涌井さん「僕等はね、オーナーズクラブとは言わずに、ベントレードライバーズクラブと言っているのですよ。この車もたまたま僕が預かっているだけなのです・・・。」

更に話は続きます。前のイギリス人オーナーからベントレーを受け継ぐにあたり、このような趣旨を共有したそうです。

涌井さん「この車の前オーナーであるMr シラスの正当な後継者は、ミュージアムではなく同じ日本人であり、誠実に動態保存をしてくれるMr ワクイだよ」

これが伝えたかった白洲次郎とベントレーの話
ベントレーは乗り続けることに価値がある。だから僕等はドライバーズクラブと言っている。ロールスロイスがショーファードリブンであるのに対して、ベントレーはオーナー自ら運転する車ですから自然の帰結です。それにしても幸せに満ちた素敵な話です。白洲次郎が生涯大切にしていた「プリンシプル(原則)」そのものを、その後のベントレーオーナー=「オイリーボーイ」たちは国境を越えて見事に継承しているのですから。白洲次郎が生涯の友とした7代ストラット伯爵家ロバート・C・ビングと、ジブラルタルまで欧州横断ドライブをしたベントレーを目の前にして僕も幸せでした。

1910  Rolls-Royce Silver Race
1910 Rolls-Royce Silver Race ドライバーズクラブの仲間にはもちろんロールス・ロイスも

動態保存と言うプリンシプル(原則)を貫くこと
クラシックベントレーは、財力があるから、著名な企業だから、だけの理由で手に入る、否、手に入れるべきクルマではないこと。ベントレーは、“ただひたすらドライブするため”という、自動車本来が持つ純粋な目的のために、人知と資材を投入し創作されてきた機械。それを所有する人は“その時代に適応した改造を施してでも乗り続ける”見識、体力、そのための財力が求められるのですね。

少なくとも涌井社長と「プリンシプル」を共有する世界中のベントレーオーナーは、次のオーナーにその「プリンシプル」を継承する意思と能力を確認し、ベントレーを托しているのでした。それはカントリージェントルマンのスピリットである“ノブレス・オブリージュ(高貴さは義務を強要する)”を実践している姿かもしれません。
企業が経営するミュージアムでは、柵の向こう側の動かない自動車を工芸品のように眺めるだけ。ドライバーズクラブのおかげで、僕等は最高のコンディションで、活き活きと走ってくれるベントレーを見ることができます。自分には出来ないノブレス・オブリージュ(高貴さは義務を強要する)”実践者に感謝です。

涌井さん「ですから、白洲号もあの当時のオリジナルを保っていません。オリジナルも価値がありますが、自動車はやっぱり走らせるものですから・・・」

この国の気候や交通事情を考えるとクラシックカーを乗り続けることの厳しさは、オーナー、いや、ドライバーとして日々実感しています。僕も、OFCC(所属するクラシックカークラブ)の仲間たちも、できるだけ原形を保ちつつ最低限の改造を施し乗り続ける工夫をしいています。(愛車シボレー・フリートラインのウォーターポンプ交換)。

「欲しいと願った車は必ず手に入るものですよ」
こともなげに湧井社長が語ります。白洲号の右隣りには終戦の激動期を共にした吉田首相のロールスロイスが、左にはルマン24時間レースの優勝車が、プライド1を誇らしくラジエーターに記したベントレーレーシングが並んでいます。世界でたった一台しか生産されなかったロールスロイスも所有されています。

1937 Rolls-Royce
左:1937 Rolls-Royce 25/30HP Sports Saloon by Hooper (吉田元首相の愛車)

Old Mother Gun
手前:1928 ル・マン24時間(24 heures du Mans)チャンピオンカー

次回予告 最終回 
次世代へつなぐミッション
涌井さん「ただね・・・この車を次の世代につなぐ仕事が僕に与えられたミッションで、これが僕の今一番の人生の悩みで宿題でもあります」

静かに語った最後の一言は、僕の心に重く圧しかかりました。

つづく

48の父


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