2013年08月08日 08:00
クルマ探し
それでも欲しいのはオープン2座席。衰えてきた闘争精神でも“走っている感のあるスペック”・・・余裕のあるトルクってことでしょうか。フリートラインの隣にいても似合うデザインで、肘をゆったりドアにかけてドライブできる抑揚のあるボディーライン。そしてエンジンフードが長く下半身のがっちりしたボリューム感。そんなことをイメージすると自然に対象が絞られます。1950年代の古典的なスポーツカーデザインです。自然に、カニ目にお湯をかけて大きくし、僕の体とバランスの取れたサイズのクルマを想像します。
もう、ビッグヒーリーしかないじゃないですか!(笑)

Photo by SuperCarFreak
さあ、これからが難問。なかなか数が少なくていいのが見つからないんです。一時は友人でさくらモーニングクルーズでもお馴染みMさんのMG TF-1500とツーリングできるMG TDに日和かけたことがありました。これではコンセプトと相反する・・・。イカン!

Photo by Mark Wheeler
巡り合い
オースチン・ヒーリーで、それも100。人気車種のようで、あきらめ気味に何故かタマの豊富なMG TDで決めようと思っていたその矢先、クラシックカーミーティングに参加していたMさんから「ヒーリーの売り物がある!」との電話。善は急げと!紹介されたオーナーのTさんに電話。ガレージに出向き、即決で「預からせてください」返答は「よろしくお願いします」翌週末に伺い面倒な計算や交渉もなく、我が屋のガレージにやってきたのです。

いきなり雨天のドライブとなりました
僕がTさんから預かる気持になったのは、Tさんがこのクルマを手に入れたエピソードを聞いて。欲しくて、欲しくて堪らなかった100/4が雑誌に出たその瞬間、仕事をほおって大阪に飛び、手に入れた下りです。これだけ惚れこみ情熱を込めた車です。それを預かれるのですから幸せなことです。
世代を超えたプレゼント
クルマを預かって間もなくTさんから、リヤハッチの上に設えたキャリアに取り付ける皮革製トランクが送られてきました。トランクの小さな英国オープンスポーツカーでロングツーリングをする際の必須アイテムです。「御爺さんが渡航用に使っていた古い鞄を直して使っているんですよ」と仰っていたのを思い出しました。受話器の向こうから「いやー、車を預ける時に渡し忘れましてね・・・」と、にこやかな声が聞こえました。ヒーリー100の次に預かったのは、なんと!知る人ぞ知る横浜は『三洋堂』の渡航用トランクだったのです。
まだおまけがあります。鞄を開くと中から出てきたのは・・・!なんとヒーリー100と3000のダイキャストモデル。それにTさん自慢のFORD GT40のモデルです。「次はGT40を預けましょうか?」と、冗談とも受け取れない、眩むような悪魔の囁きつきでした(笑)。

その後、“ヒーリーを貴方に買って貰って本当によかった。どうぞ息子さんとヒーリーライフを楽しんでください”と記された葉書が届いたのです。
“追伸 ガレージが寂しくなりました・・・”
というくだりが、僕のカニ目を預けた寂しさと重なり、愛情を注いだクルマを信頼できる仲間内で“託す・託されるしみじみとした感情”は、郷愁に似た切なくて幸せな気持ちです。
つながっていることの重み
後で知ることになるのですが・・・。横浜『三洋堂』は、鞄袋もの販売会社として明治40年に創業されました。ワシントンとロンドン軍縮会議に挑む全権交渉団が日本の運命を背負い、『三洋堂』の渡航用品一式で身支度を整え、颯爽と海を渡ったそうです。因縁めいているのですが、僕が心底敬愛する郷土・長岡の偉人、山本五十六連合艦隊司令長官が海軍中将時代、ロンドン軍縮会議の予備交渉責任者として携えて行ったのも『三洋堂』製の鞄であったと想像するのが自然です。それをルーツとする鞄がTさんの祖父から受け継がれ、英国車ヒーリーと共に僕に託されたのです。かつて争った国のクルマが日本人に愛され、鞄の中身が国家最高機密の軍事書類から、おもちゃのダイキャストモデルに変ったけれど、時空を超えてクラフツマンシップを愛する志で繋がりました。平和な時代に生まれたからこそ活かされてきたデザイナーの端くれとして、改めて先人たちに深い感謝の思いを抱きました。
サヨナラカニメ

ハローヒーリー100

このバトンタッチ劇は、僕の心にとても大きなものを残してくれました。あらためてクラシックカーと、それを大切に預かり、次の世代につなぐ心意気を持った仲間たちに大感謝です。
48の父

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Tさんの所へはAUDI TTでお伺いしました。帰りのSAで撮影した写真です。メーカーも世代も国籍も全く異なる2台ですが、不思議とシックリきてる感じがしました。ホント、感覚的な事で、だからなんだって事はないんですけどね。
Jr
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